仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
諦めてスマホを手放したとき、着信音が流れ出した。

直ぐに確認すると表示されているのは、【葉月慧】だった。

『もしもし』

迷わず出ると、明るい声が聞こえて来た。

『美琴? 久しぶり。今、話せるか?』

『うん、大丈夫だよ。ちょうど誰かと話したいと思ってたの』

慧が小さく笑った。

『なんだよ。主婦は忙しい時じゃないのか?』

『だってやる事ないんだもの。大掃除だって必要ないし。慧は何をしてるの?』

『俺はついさっきまで仕事。ようやくフリーになったから、美琴に電話してみた』

慧の声と共に車が行き交う音がする。

『外にいるの? 』

『ああ、人が沢山。美琴は家だろ?』

『うん』

『……ひとりなのか?』

慧が少しの躊躇いの後に聞いてくる。

『そうだよ。夫はいつも不在だからね』

あえて、ふざけた調子で言うと、慧が珍しく沈んだ声音で呟いた。

『そっか……いつもなのか。こんな日も』

『気にしてないけどね。顔を合わさない方が気楽だし』

『……どこか、行くか?』

『えっ⁈』

思いがけない慧の発言に、美琴は高い声を上げた。

『ひとりで家に居ても退屈だろ? 飲みにでも行かないか?』

慧が気を遣って誘ってくれているのだと直ぐに分かった。

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