仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
野心などなく穏やかな人だと信じていた父親にそんな一面が有ったなんて……当時を思い出そうとするけれど、なぜか父親の様子が記憶にない。
あるのは、居心地の悪かった久我山家での暮らしと、一希との交流だけ。
「夫の裏切りで気弱になったからか、絢子は回復しないまま、亡くなった。その時私は心から後悔した。娘がなんと言おうとあの男との結婚に反対すれば良かったと。その後、美琴を引き取ろうとしたが、出来なかった。父親が美琴を手放さなかったのと、美琴自身が父親といたいと望んだからだ」
「……その頃のことはよく覚えていないんです」
「まだ幼かったから仕方ないだろう。その後、定期的に調査を入れて美琴の様子を確認していたが酷いものだった。勉強をする時間もない程、家の仕事に明け暮れていた。そして、父親が倒れたとき、更に事態は悪化しそうになった。もう駄目だ、これ以上は見過ごせないと行動に出た」
「それで結婚を……」
思いもしない事実だった。
厳しく、美琴を家の道具として扱っているように見えた祖父は、実は美琴を心配してくれていたなんて。
(信じられない……)
しかし、祖父が嘘を言っているようにも見えなかった。
あるのは、居心地の悪かった久我山家での暮らしと、一希との交流だけ。
「夫の裏切りで気弱になったからか、絢子は回復しないまま、亡くなった。その時私は心から後悔した。娘がなんと言おうとあの男との結婚に反対すれば良かったと。その後、美琴を引き取ろうとしたが、出来なかった。父親が美琴を手放さなかったのと、美琴自身が父親といたいと望んだからだ」
「……その頃のことはよく覚えていないんです」
「まだ幼かったから仕方ないだろう。その後、定期的に調査を入れて美琴の様子を確認していたが酷いものだった。勉強をする時間もない程、家の仕事に明け暮れていた。そして、父親が倒れたとき、更に事態は悪化しそうになった。もう駄目だ、これ以上は見過ごせないと行動に出た」
「それで結婚を……」
思いもしない事実だった。
厳しく、美琴を家の道具として扱っているように見えた祖父は、実は美琴を心配してくれていたなんて。
(信じられない……)
しかし、祖父が嘘を言っているようにも見えなかった。