仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
祖父に促され、美琴は中身を慎重に取り出す。
薄い黒表紙のファイルだった。
表紙には何も記載されていない。
訝しみながらファイルを開く。一ページ目には写真が挟んで有った。
「これは……お父さんと恵美子さん?」
けれど、大分若い。特に恵美子は美琴よりも年下に見える。
「いつの写真なんですか?」
「美琴の母親……絢子が入院している頃の写真だ」
祖父の言葉に衝撃を受け、咄嗟にファイルに記載してある日付を確認する。
「……お父さんと、恵美子さんはお母さんが亡くなったあとに知り合ったんじゃないんですか?」
「違う。絢子が亡くなるよりも前から、ふたりは交際していた。そしてその事実を絢子も知っていた」
「そんな……だって、お父さんとお母さんはとても仲が良かったのに」
環境が違うふたりはひょんなことから知り合い、そして大恋愛をして結ばれた。
障害を乗り越えた、強い絆がある夫婦だと信じていたのに。
「絢子の結婚には反対し続けた。美琴の父親が信用出来ず娘は任せられないと思ったからだ。だが、最終的には許してしまった。生活に苦労したとしても望む相手と結婚することが娘の幸せだと信じ……それなのに、結婚して十年であいつは絢子を裏切り、若い女に夢中になった。病気で入院している絢子の顔を見にさえ来なかった」
「うそ……」
薄い黒表紙のファイルだった。
表紙には何も記載されていない。
訝しみながらファイルを開く。一ページ目には写真が挟んで有った。
「これは……お父さんと恵美子さん?」
けれど、大分若い。特に恵美子は美琴よりも年下に見える。
「いつの写真なんですか?」
「美琴の母親……絢子が入院している頃の写真だ」
祖父の言葉に衝撃を受け、咄嗟にファイルに記載してある日付を確認する。
「……お父さんと、恵美子さんはお母さんが亡くなったあとに知り合ったんじゃないんですか?」
「違う。絢子が亡くなるよりも前から、ふたりは交際していた。そしてその事実を絢子も知っていた」
「そんな……だって、お父さんとお母さんはとても仲が良かったのに」
環境が違うふたりはひょんなことから知り合い、そして大恋愛をして結ばれた。
障害を乗り越えた、強い絆がある夫婦だと信じていたのに。
「絢子の結婚には反対し続けた。美琴の父親が信用出来ず娘は任せられないと思ったからだ。だが、最終的には許してしまった。生活に苦労したとしても望む相手と結婚することが娘の幸せだと信じ……それなのに、結婚して十年であいつは絢子を裏切り、若い女に夢中になった。病気で入院している絢子の顔を見にさえ来なかった」
「うそ……」