仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~

冷静に思い起こしているとうちに、ふと思い出した。

観原千夜子の話の中で、一希の態度が不自然な点があったことを。

「何を言っているときだっけ……」

小さく声に出して、まだ新しい記憶を探る。

(そうだ……お義母様と観原千夜子の関係の話になったとき)


『……俺は千夜子との結婚を考えたことはない』
『でもお義母様は彼女を一希の奥さんにしたいみたいだったわ。観原千夜子はお義母様の親友の娘なんですってね、自分の本当の娘のように感じているんじゃないの?』

一希は美琴の発言への返事をしなかった。

すぐに話題を変えて来たのだ。

千夜子の件になると細かいことまでも追及して来る一希の態度とは思えなかった。

「……お義母様と観原千夜子の関係について触れられたくないの? でもどうして……」

親友の娘というだけなら隠す必要もないはずなのに。

今に始まったことではないが、一希の考えが分からない。ますます不可解だ。

違和感を解消出来ないまま、リビングから一希の気配が消えるのを待った。
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