仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
必要な連絡を済ませ、溜まった書類仕事を進めていると、千夜子が資料を手にやって来た。
「はい、今日の経営会議の資料よ。重要そうなところはチェックいれておいたわ」
「すまない」
一希が資料を受け取っても千夜子は秘書室には戻らず、執務机の近くにある応接セットのソファに腰を下ろし、スマートフォンを取り出した。
何かのチェックを済ませると、千夜子は立ち上がり一希の直ぐ側まで近づいて来た。
「ねえさっきの話の続きだけど、急に以前の出来事を蒸し返して来たのは、美琴さんが何か言いだしたからよね?」
「そうじゃない、俺が少し気になっただけだ」
「いいえ、どう考えてもあの子が絡んでいるはずよ……一希、まさか一緒に暮らしている内に絆されてしまったんじゃないわよね?」
千夜子は一希の表情を見逃さないとでも言うように、じっと見つめる。
「……そんなんじゃない」
「そうかしら? 結婚前は久我山家の愚痴を言っていたのに、最近は全然言わなくなったわよね、どうしてなの?」
「言う必要がないからだ。久我山氏は予想外に俺たちの生活に介入して来ないし、美琴も普段は我儘など一切言わない……あの二人のことを誤解していたのかもしれないと最近では思うようになった」
脳裏に、久我山俊三から結婚の話を持ちかけられたときの記憶が蘇る――――
「はい、今日の経営会議の資料よ。重要そうなところはチェックいれておいたわ」
「すまない」
一希が資料を受け取っても千夜子は秘書室には戻らず、執務机の近くにある応接セットのソファに腰を下ろし、スマートフォンを取り出した。
何かのチェックを済ませると、千夜子は立ち上がり一希の直ぐ側まで近づいて来た。
「ねえさっきの話の続きだけど、急に以前の出来事を蒸し返して来たのは、美琴さんが何か言いだしたからよね?」
「そうじゃない、俺が少し気になっただけだ」
「いいえ、どう考えてもあの子が絡んでいるはずよ……一希、まさか一緒に暮らしている内に絆されてしまったんじゃないわよね?」
千夜子は一希の表情を見逃さないとでも言うように、じっと見つめる。
「……そんなんじゃない」
「そうかしら? 結婚前は久我山家の愚痴を言っていたのに、最近は全然言わなくなったわよね、どうしてなの?」
「言う必要がないからだ。久我山氏は予想外に俺たちの生活に介入して来ないし、美琴も普段は我儘など一切言わない……あの二人のことを誤解していたのかもしれないと最近では思うようになった」
脳裏に、久我山俊三から結婚の話を持ちかけられたときの記憶が蘇る――――