仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
久我山俊三に“内密の話がある”と呼び出されたのは、桜も散り始めた穏やかな春の日だった。
都心の名門ホテルのテラスからの望む庭園は美しいが、久我山氏と対峙して直ぐに嫌な予感に襲われた。
父、神楽朗の友人でもある彼は、旧華族で現在は中規模の不動産会社を経営している。
しかしこれまで一希と個人的な交流は無かったため連絡を受けたときは困惑した。
それでも無視できる相手ではないので応じてやって来たが、久我山俊三から出た言葉は予想もしていないものだった。
『私はね、君と観原家の関係を知っているんだ。しかしそれを他言するつもりはない、勿論君の父親にもだ。ただ黙っている条件として私の願いを聞いてもらいたい』
『何をおっしゃっているのか理解しかねますが』
激しく動揺したが、直ぐに立て直したつもりだった。
久我山俊三がなぜ観原家の名を出したのかは不明だが、全てを知っている可能性は限りなく低い。動揺して隙を見せる方がよくないと思った。
しかし彼は一希の反応を見越していたのか、薄く笑うと手にしていた封筒を差し出して来た。
『これを見てもそう言えるかな?』
重い気持ちになりながら封筒を受け取り中身を確認する。
入っていたのは数枚に渡る報告書。
一希にとって絶対に知られたく内容が記されており、最後には“牧之原病院”の名前まで出て来ていた。
都心の名門ホテルのテラスからの望む庭園は美しいが、久我山氏と対峙して直ぐに嫌な予感に襲われた。
父、神楽朗の友人でもある彼は、旧華族で現在は中規模の不動産会社を経営している。
しかしこれまで一希と個人的な交流は無かったため連絡を受けたときは困惑した。
それでも無視できる相手ではないので応じてやって来たが、久我山俊三から出た言葉は予想もしていないものだった。
『私はね、君と観原家の関係を知っているんだ。しかしそれを他言するつもりはない、勿論君の父親にもだ。ただ黙っている条件として私の願いを聞いてもらいたい』
『何をおっしゃっているのか理解しかねますが』
激しく動揺したが、直ぐに立て直したつもりだった。
久我山俊三がなぜ観原家の名を出したのかは不明だが、全てを知っている可能性は限りなく低い。動揺して隙を見せる方がよくないと思った。
しかし彼は一希の反応を見越していたのか、薄く笑うと手にしていた封筒を差し出して来た。
『これを見てもそう言えるかな?』
重い気持ちになりながら封筒を受け取り中身を確認する。
入っていたのは数枚に渡る報告書。
一希にとって絶対に知られたく内容が記されており、最後には“牧之原病院”の名前まで出て来ていた。