仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
都内の最高級ホテルのスイートルーム。


結婚してはじめての夜に相応しい広いベッドの上にひとりで寝転がった美琴は、なんとも言えない気持ちになった。

(結婚式の夜にひとりぼっちの花嫁なんて、多分私くらいね)

夫となった神楽一希は、披露宴の後、親しい友人達と出かけて行き、深夜二時を回った今でも戻らない。

一希は、「美琴も一緒に行かないか? 」と、誘う素振りすら見せなかった。

彼は自分の領域に美琴を入れるつもりはないのだ。そう受け止めると、改めて一希との間にある深い溝を強く感じた。

(仕方ないか、あの人には愛する人がいるから……)

政略結婚で妻になった美琴に、歩み寄る気が起きないのは当然なのだろう。

問題は、美琴が一希に想いを寄せているということだ。

愛のない結婚をする覚悟は有った。
祖父の決めた相手に嫁ぐと決めたのは、自分自身なのだから。

しかし、その相手が長年の片想いの相手だっただなんて、あまりに不幸なことではないか。

どうせ愛して貰えない結婚なら、本当に何の感情も無い人が相手だったら楽だったのに。
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