仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
何も分かっていないような美琴に、はっきりと告げる。

『君を妻として扶養する。十分な生活環境を与えるし、子供も作る、契約だからな。ただし、家族愛やそれ以上の情を求められても迷惑でしかないし、応えるつもりもない』

『……! そ、そんなことって……家族愛も持てない相手と、どうして子供なんて作れるの?』

あからさまに動揺をする彼女に対し、苛立ちが湧き上がった。

そうするしかない状況に追い込んだのは、他ならない自分だろうと責めたくなる。

『そういう約束で結婚した。それは君だって同じだろう? 嫌なら断れば良かった。だがそうしなかったのだから義務は果たすべきだ』

愛情からでなく、打算で結婚したのはお互い様だ。嫌なら辞めれば良かったのだ。

自分と違って美琴は、断る道も有ったのだから。

痛いところを突いたのか、美琴は黙り込み視線を彷徨わせ、やがてぼつりと呟いた。

『……一希は知っていたの? 相手が私だって……それでも結婚を受けたの?』

今更何を言い出すんだとあきれ果てた。

『当然だ。だがそれがなんだって言うんだ? 結婚相手が偶然昔の知り合いってだけで、条件が変わる訳でもない』

不毛なやりとりにうんざりし、まだ何か言いたそうな美琴を残しオフィスに向かった。

結婚生活初日からのトラブルに、溜息が漏れて来た。

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