仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
『……あなたにとって彼女は誰よりも大切な人なのでしょうけど、私にとっては無神経で失礼な人にしか見えないの。二度と会いたくないわ』

彼女に気圧されそうになっていたが、気を取り直して反論する。

『彼女ををよく知りもしないくせに、ただ気に入らないだけで拒絶するのか? 傲慢だとは思わないのか⁈』

激高する一希に対しても美琴はどこまでも冷ややかだった。

『私は彼女を許せないし、今後もその気持ちは変わらない。私のテリトリーには入れないから』

『どこまでも頑なだな。千夜子は俺の秘書だ。仕事で家にも来る。妻の権利を振りかざして仕事の邪魔をするのは許さない』

『頑ななのはそっちでしょう? 一希は観原千夜子の主張だけを信じて、私が一方的に悪いと決めつけている。今回に限らずいつも私の言葉なんて一切聞かないで、ただ責めてくるだけ。自分の言動を客観的に見てみたら? 』

美琴が嘲笑しながら言う。侮辱された怒りがこみ上げるが、確かに今までまともに彼女の言い分を聞いたことは無かった。

『……ならばお前の言い分を聞いてやる』

一希としては譲歩したつもりだった。しかし彼女は頑なだった。

『さっきから言ってるわ。観原千夜子を私とこの家に近付けないで。秘書だから無理と言うなら秘書を別の人にして』

更には、脅迫までして来た。
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