仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
『先に言っておくが、そのパーティには千夜子も出席する』

『ど、どうして?』

それまで落ち着いた様子だった美琴が、突然声を高くした。

千夜子の名を出すのだからある程度は予想していたが、想像以上の反応だった。

(なぜここまで千夜子を嫌うんだ?)

千夜子がその立場から美琴を疎ましくするのは理解できる。しかし美琴の考えは理解できない。出来る程彼女のことを知らないからだと気がついた。

美琴は依然として興奮が収まらないように、早口にまくし立てる。

『彼女を連れて行くなら私が出席する必要はないでしょう? 妻役が二人いたらおかしいもの』

『……何を言っている? 千夜子は観原家の人間として招待されているんだ。それに俺の同行者になれる訳がないだろう?』

一希の妻は美琴だ。なぜそれが分からないのだろう。

怪訝に感じていると美琴は戸惑ったように視線を彷徨わす。

『お前がいくら不満を言っても、千夜子が柿ノ木家のパーティに出席するのに口出し出来ない。当日顔を合わしたとしても、間違ってもこの前のような態度はとるな』

柿の木家のパーティーという公の場で千夜子を攻撃したら、美琴の評判が下がるだけだ。
美琴もそれは理解しているようで、不満そうにしながらも頷いた。

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