仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
八時過ぎに自宅に帰った。
美琴は玄関脇の納戸部屋ではなくキッチンに居た。一希と目が合うと困惑の表情になる。
その様子から歓迎されていないことは間違いないだろう。
『……おかえりなさい、食事はしてきたの?』
何を考えているのか読み取れない淡々とした声だった。
美琴の隣のキッチンのシンクを見れば綺麗に片付いていた。恐らく食事の片づけが終わったところなのだろう。
夕食は取っていなかったが、自分の為だけにまた支度をしろとは言えない。
『いや……不要だ。話がある』
そう言い、美琴をリビングに促した。
ビジネスバッグから柿木家からの招待状を取り出し、ローテーブルに置いた。
『柿ノ木家で大きな集まりがある』
『柿ノ木製薬の創業者のこと?』
さすがに久我山家の娘だけある。神楽家の交友関係には詳しいようだ。
『そうだ。先日会長を退いたが、今までの功績を称えて祝いの席を設けるそうだ。俺たちも招待されている』
『私も? それは招待状なの?』
ローテーブルの封筒に手を伸ばす。
『そうだ。正式なパーティは基本的に夫婦同伴だからな』
『……分かった、準備しておくわ』
美琴は乗り気ではない様子ながらも、同伴を拒否することはなかった。
どこかホッとしながら、続きを口にする。