仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第十二章 後悔~一希side~
自分の至らなさを自覚したせいか、美琴に対してそれまでとは違った気まずさを感じるようになっていた。

美琴も一希と顔を合わせないようにしている様子が嫌でも分る。一希が帰宅すると極力部屋から出て来ないのだ。

あの狭い納戸部屋に籠っていては窮屈だろう。だからと言って声をかけたところで美琴が出て来るとは思えなかった。一希に出来ることはなるべく自宅に戻らないようにすることくらいだ。

結婚して直ぐの頃のように、オフィスとホテルとの往復の日々を送っていた。

そんなある日、待ちわびていた連絡が入り一希は仕事を切り上げ、待ち合わせをしているホテルのレストランに向かった。


「久しぶりだな。急ぎの用って何だ? もしかして離婚の相談か?」

一希と机を挟んで座る男性は柴本と言う名の、学生時代の友人だ。

商社勤務で現在はヨーロッパに赴任している。

特別親しくしていたつもりは無かったが柴本の性格なのか、距離のない遠慮のない物言いをする人物だ。

一希はとくに不快に感じたことは無かったが、今はその態度が無神経に感じ苛立ちが生まれるのを自覚した。

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