仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
先日、遅く帰って来たことを問い詰めたばかりだから、そう思われても仕方ない。
ふたりの間の深い溝を改めて感じた。
再び気まずい沈黙に陥りそうになったとき、自分でも思いがけない言葉が口からこぼれた。
「美琴の食事だけは美味しく感じる」
「え?」
機嫌悪そうにそっぽを向いていた美琴が、信じられないといった様子で一希を見る。
その様子で、自分が発した言葉に気付き、内心慌てる。
ご機嫌を取る為に褒めようなんて気はなく本心が漏れ出ただけだ。
伝えるつもりは少しもなかったのに。
「まるで私の料理以外は美味しくないみたい……嘘つきね、そんなことある訳ないのに」
「嘘ではない。食事に満足したのは久しぶりだ」
「信じられない。だって昔の一希は食べることが大好きだったじゃない。私にだって辛いときもしっかり食べなくちゃ駄目だっていつも言ってた」
「……そんなことも有ったな」
ぼんやりとした想い出が浮かんで来る。
千夜子と出会うよりも前。悩みなどなく、将来に希望を持っていた頃。
まだ幼い美琴が落ち込んで泣いていた。
母親を亡くしたのだから無理はない。けれどいつまでも塞いで閉じこもっていては病気になってしまいそうだと思い、小さな彼女を食卓に誘い食事の大切さを教えた。
「あの頃の一希はビーフシチューを美味しいって何度もいいながらいつも食べていたわ。今では嫌いになったみたいだけど」
「ビーフシチュー?」
好物だったことなどない。基本的に食べられないものはないが、出来れば避けたい料理だ……少し考え思い出した。
「それは美琴が好きな料理だろう?」
ふたりの間の深い溝を改めて感じた。
再び気まずい沈黙に陥りそうになったとき、自分でも思いがけない言葉が口からこぼれた。
「美琴の食事だけは美味しく感じる」
「え?」
機嫌悪そうにそっぽを向いていた美琴が、信じられないといった様子で一希を見る。
その様子で、自分が発した言葉に気付き、内心慌てる。
ご機嫌を取る為に褒めようなんて気はなく本心が漏れ出ただけだ。
伝えるつもりは少しもなかったのに。
「まるで私の料理以外は美味しくないみたい……嘘つきね、そんなことある訳ないのに」
「嘘ではない。食事に満足したのは久しぶりだ」
「信じられない。だって昔の一希は食べることが大好きだったじゃない。私にだって辛いときもしっかり食べなくちゃ駄目だっていつも言ってた」
「……そんなことも有ったな」
ぼんやりとした想い出が浮かんで来る。
千夜子と出会うよりも前。悩みなどなく、将来に希望を持っていた頃。
まだ幼い美琴が落ち込んで泣いていた。
母親を亡くしたのだから無理はない。けれどいつまでも塞いで閉じこもっていては病気になってしまいそうだと思い、小さな彼女を食卓に誘い食事の大切さを教えた。
「あの頃の一希はビーフシチューを美味しいって何度もいいながらいつも食べていたわ。今では嫌いになったみたいだけど」
「ビーフシチュー?」
好物だったことなどない。基本的に食べられないものはないが、出来れば避けたい料理だ……少し考え思い出した。
「それは美琴が好きな料理だろう?」