仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
翌日は少し悩んだけれど、しっかりした夕食を準備した。

ここ数日の行動を見ると帰ってくる可能性が高いと思たからだ。

予想通り一希は帰って来た。

いつもリビングにいるのでそちらに食事を準備すると、ダイニングテーブルで食べたいと言われその通りにした。

食事の用意は主婦の美琴の仕事だから、しっかりやると決めていた。

片付けの為に一希の食事が終わるのを待っていると、今日の行動を聞かれた。

(まだ慧とのこと疑ってるの?)

不快に感じながらも正直に答える。

いつも通りもっと責められると思ったが、一希はあっさり引き下がった。

意外に感じていると一希が呟いた。

「美琴の食事だけは美味しく感じる」

「え?」

急に何を言い出すのだろう。今まで散々拒否していたのに。

けれど一希は本音だという。

そして思いがけず彼が昔からビーフシチューを嫌いだった事実を知った。

結婚して直ぐに嫌いだと拒否されたとき、それは美琴が作ったものだから嫌いだという意味だと受け取った。

しかし実際は本当に嫌いな料理だったようだ。

昔よく食べていたのは、美琴の好みに合わせていたからだという。

(嫌いなものを私に合わせて食べるなんて……昔はそんな優しさがあったんだよね)

あの頃の一希はもういない。

目の前にいるのは夫でありながら美琴を蔑ろにし、他の女性を大切に守るような心ない人。

そう分かっているけれど、優しい思い出を久しぶりに思い出していた。


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