仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一希に対して経済的に必要以上頼るつもりはなかった。

たとえ実家が苦しくても結婚前に決まった契約通りに過ごしたかった。

それは美琴のちっぽけなプライドでもあり、正義だった。けれど。

(一希と観原千夜子から見たら、私の行動って意味がないことに映っているのかもしれない)

虚しさに襲われる。

「このことは言おうか迷ってたんだ。最近の美琴の様子から必要ない情報とも感じた。でも神楽さんが離婚を言い出しているのなら話は変わって来る」

慧が深刻そうな表情で言う。

「あの、どういうこと? ちょっと考えがまとまらなくて」

「離婚しても美琴に資産が渡らないようにしている可能性もある」

「……私にお金を渡さないようにする為に、彼女の財産にしているって言うの?」

驚く美琴に、慧は複雑そうな顔をした。

「美琴の話を聞く限りではそうは思えない。ただ、俺は直接神楽さんの様子を見た訳じゃないし、今までの彼の言動を思うと絶対違うとは断言できない。美琴のお祖父さんを警戒しての行動かもしれない」

「一希は離婚のときは出来るだけのことはするって言ってたの」

あれは嘘なのだろうか。

「そうか。それなら俺が気にし過ぎているのかもしれない。神楽さんと観原家の関係も未だに分からないから心配ではあるが、美琴が神楽さんを信じるというならそれでいいと思う。けど困ったことが有ったら周りに相談しろよ? 俺でもお祖父さんにでも、一人で抱え込むなよ?」

慧が心配そうに言う。

「ありがとう。ごめんね心配かけてしまって。それに一希のお金のこと言いづらかったでしょう? 私の為に話してくれたんだよね」

慧ならば話せば美琴がショックを受けることも、せっかく穏やかになりつつある一希との関係に溝が出来る可能性も分っていたはずだ。

それでも話したのは、美琴を心配してのことだろう。

「ずいぶん、察しがいいな」

慧が苦笑いをする。

「うん、一希の事になると全然駄目なんだけどね」
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