仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
予定より少し早く医師が到着し、さっそく一希の診察を始めた。
疲労で体調を崩したのだろうという診断で、熱が下がるまではベッドで大人しくしているようにとのことだった。
薬をもらい、いくつか注意を受けたけれど、だいたいが実家で風邪をひいた兄弟の世話をしていたときに学んだ内容だったので、心配は無さそうだった。
一回目の薬を医師の居る前で飲んだ一希は、直ぐに眠りについた。
その間、美琴はリビングでなるべく音を立てないように過ごしていた。しばらくすると、シンとした部屋に突然着信音が鳴り響いた。
驚き音の方に目を向けると、一希のビジネスバッグの近くにスマホが放り投げられていて、音はそこからのようだった。
(一希が起きちゃう)
慌てて手に取ると画面に表示されているのは千夜子の名前だった。
(さっき別れたばかりなのに……)
電話が切れると、美琴は音量を下げてスマホを元の場所に戻した。
一希に知らせる気にはなれなかった。
(お医者様だって安静にしろと言っていたんだし)
スマホはそれから何度も着信を告げた。美琴が不安になる程執拗に。
――観原千夜子――
その表示を目にする度に、美琴の胸には重苦しい感情が募っていった。
疲労で体調を崩したのだろうという診断で、熱が下がるまではベッドで大人しくしているようにとのことだった。
薬をもらい、いくつか注意を受けたけれど、だいたいが実家で風邪をひいた兄弟の世話をしていたときに学んだ内容だったので、心配は無さそうだった。
一回目の薬を医師の居る前で飲んだ一希は、直ぐに眠りについた。
その間、美琴はリビングでなるべく音を立てないように過ごしていた。しばらくすると、シンとした部屋に突然着信音が鳴り響いた。
驚き音の方に目を向けると、一希のビジネスバッグの近くにスマホが放り投げられていて、音はそこからのようだった。
(一希が起きちゃう)
慌てて手に取ると画面に表示されているのは千夜子の名前だった。
(さっき別れたばかりなのに……)
電話が切れると、美琴は音量を下げてスマホを元の場所に戻した。
一希に知らせる気にはなれなかった。
(お医者様だって安静にしろと言っていたんだし)
スマホはそれから何度も着信を告げた。美琴が不安になる程執拗に。
――観原千夜子――
その表示を目にする度に、美琴の胸には重苦しい感情が募っていった。