仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
(弱みに付け込んで?……お祖父さんのこと?)
確かに一希は祖父から無理やり結婚を強いられた。
けれど今はもう解決している。だから離婚話が進んでいるのだ。
それに祖父の行動は間違っていると美琴も思うけれど、千夜子には言われたくない。
「そのことをあなたに責められる筋合いはありません」
強気で告げると、千夜子は嘲笑を浮かべた。
「ない訳ないでしょう? だって一希の弱みは私なんだから。彼はね、久我山から私を守る為に好きでもないあなたと結婚したのよ」
千夜子の言葉に、美琴は息を呑んだ。
(一希の弱みって、この人のことなの?)
脳裏にいつかの一希の言葉が蘇る。
『俺にとって、誰よりも守りたい相手だ』
その宣言通り、一希はずっと千夜子を守っていたということなのだろうか。
自分を犠牲にして、嫌いな美琴と暮らしてまで。
胸がズキズキと痛んだ。
一希の冷ややかな眼差しが浮かんで来る。
同時に小さく笑う穏やかな姿も。
(どっちが本当の一希なの?)
分らない。
混乱する美琴を見て留飲を下げたのか、千夜子はゆったりとした動作でソファーの上で足を組みかえ口元に笑みを浮かべた。
「本来なら私は一希も神楽グループの後継の地位も手に入れるはずだったのよ。それを久我山が邪魔をした。許せないわ。離婚になるそうだし立場を弁え二度と私の前に現れないで。今日はそれを言いに来たのよ」
うっすらと千夜子の目的が見えて来た。
おそらく宣言するだけでなく、一希の気持ちを何も知らなかった美琴に伝え傷つける為だ。
(私に復讐しているんだ)
千夜子のことは大嫌いだった。顔も見るのも嫌だった。
きっと千夜子も同じような想いを美琴に抱いていたのだろう。
返す言葉が出て来ない美琴を冷酷に見据えていた千夜子は、ソファーから立ち上がった。
「あなたの存在がストレスだった。ようやく離れられてすっきりするわ」
千夜子は振り返らずに応接間を出て行った。
確かに一希は祖父から無理やり結婚を強いられた。
けれど今はもう解決している。だから離婚話が進んでいるのだ。
それに祖父の行動は間違っていると美琴も思うけれど、千夜子には言われたくない。
「そのことをあなたに責められる筋合いはありません」
強気で告げると、千夜子は嘲笑を浮かべた。
「ない訳ないでしょう? だって一希の弱みは私なんだから。彼はね、久我山から私を守る為に好きでもないあなたと結婚したのよ」
千夜子の言葉に、美琴は息を呑んだ。
(一希の弱みって、この人のことなの?)
脳裏にいつかの一希の言葉が蘇る。
『俺にとって、誰よりも守りたい相手だ』
その宣言通り、一希はずっと千夜子を守っていたということなのだろうか。
自分を犠牲にして、嫌いな美琴と暮らしてまで。
胸がズキズキと痛んだ。
一希の冷ややかな眼差しが浮かんで来る。
同時に小さく笑う穏やかな姿も。
(どっちが本当の一希なの?)
分らない。
混乱する美琴を見て留飲を下げたのか、千夜子はゆったりとした動作でソファーの上で足を組みかえ口元に笑みを浮かべた。
「本来なら私は一希も神楽グループの後継の地位も手に入れるはずだったのよ。それを久我山が邪魔をした。許せないわ。離婚になるそうだし立場を弁え二度と私の前に現れないで。今日はそれを言いに来たのよ」
うっすらと千夜子の目的が見えて来た。
おそらく宣言するだけでなく、一希の気持ちを何も知らなかった美琴に伝え傷つける為だ。
(私に復讐しているんだ)
千夜子のことは大嫌いだった。顔も見るのも嫌だった。
きっと千夜子も同じような想いを美琴に抱いていたのだろう。
返す言葉が出て来ない美琴を冷酷に見据えていた千夜子は、ソファーから立ち上がった。
「あなたの存在がストレスだった。ようやく離れられてすっきりするわ」
千夜子は振り返らずに応接間を出て行った。