仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「あなたも知っての通り、一希は後継者から外れたからよ。おかげで神楽グループは今結構な混乱よ」

「外れたからなに? あなたが一希の側にいたのは財産や地位が目当てだったの?」

そういった女性は一希の周りには大勢いる。しかし千夜子は違うと感じていた。

一希自身に執着し、だからこそ妻の座に就いた美琴が許せず攻撃的になっているのだろうと。

美琴の言葉が気に入らなかったのか、千夜子の目付きが険しくなる。

「あなたにだけは言われたくないわ。急に現れて厚かましくも一希の妻に収まって。あなたのせいで計画が崩れ、私は一希に劣る平凡な男の妻にならなくてはならないのよ」

「私のせい? でも一希はあなたに恋愛感情は無いと言ってたわ。それに一希が好きなら他の人と結婚なんてしなければいい。地位や財産を選んだのは自分自身でしょう? それなのに私のせいにしないで」

千夜子の発言は終始不快で、美琴もつい攻撃的になってしまう。

(自分の結婚まで私のせいにするなんて)

筋違いだと感じたが、千夜子にとってはそうではないようだった。

「まるで自分は何も悪くないような顔をしているわね? 他人の弱みに付け込んで一希と無理やり結婚したくせに!」

ヒステリックな千夜子の声に、美琴は顔をしかめる。
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