仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~

「そうだ。その時に言われたことを、久我山氏は知っていた。誰にも知られているはずがなかったが、美琴の母親が聞いて知っていたそうだ」

「私の母から?」

「ああ、俺たちの母親と美琴の母親は友人だった。何かのきっかけで秘密を知った美琴の母は長く胸に秘めていたが、亡くなる前に久我山氏にだけに打ち明けたそうだ」

一希は事実を語っているのだろうが、疑問を覚えた。

母が亡くなったのは約十年前。祖父はその間ずっと何も言わずに黙っていた。それが美琴を結婚させる為だけに急に脅迫などするものなのか。

気にはなかったが話を邪魔する訳にもいかないので黙っておく。

すると一希はひと際緊張した様子で言葉を発した。

「母親から聞いた話の内容は、俺と千夜子は取り換えられた子だということだった」

「……え?」

思いがけない内容に、美琴は目を見開いた。

(取り換えられた子?……それはまさか……)

驚愕する美琴に一希が続ける。

「つまり神楽家の本当の後継は千夜子なんだ。俺の本当の両親は観原家のふたりになる」

「な、なんで! どうしてそんなことになってるの?」

思わずソファーから腰を上げる美琴とは対照的に、一希は落ち着いていた。

「当時の神楽寛子はどうしても神楽グループの後継者となる男子を産む必要があったからだ。俺と千夜子は誕生日も近いから入れ替わっても気付かれなかった」

「そんな無理よ! 病院で生まれた赤ちゃんはちゃんと管理されているもの。病院のスタッフの目をごまかすなんて出来ないわ。それにお義父様を騙せる訳がないじゃない」

弟が生まれた時の事を思い返しても、赤ちゃんを取り換えるなんて不可能だと思った。

しかし有り得ないと思いながらも、胸がざわざわとするのを止められない。

本能的に一希の言葉が真実なのだろうと感じているのかもしれない。
< 324 / 341 >

この作品をシェア

pagetop