仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~

数日後。


美琴はひとり、空港を訪れていた。

帰国する一希を待つ為だ。

この一年、一希からの連絡は数える程だった。

慣れない環境での生活は大変そうでそれが分かっているからこそ、美琴からも気軽に連絡が出来なくなっていた。

それでも今日の日を心の支えに過ごしていた。

人で溢れる空港内でも一希を直ぐに見つけることが出来た。

冴え冴えとした容姿は変わらない。

胸が詰まり思わず立ち止まった美琴を、一希が見つけた。

彼も立ち止まり、けれど直ぐに歩み寄って来る。

鼓動が早鐘を打つ中、一希は美琴の目の前で立ち止まった。

「久しぶり」

一希が優しい目で美琴を見下ろす。

「久しぶり……一希、会いたかったよ」

思わずそう口にすると、一希は驚いたような顔をしてそれから幸せそうな笑顔を浮かべた。

「俺も会いたかった。美琴、一年前の約束は覚えているか?」

「うん、忘れたことなんてない」

気持が変わらなかったら結婚する。信じて今日の再会を待ったのだから。

一希は頷くと、美琴の手を取って言った。

「美琴、俺と結婚して欲しい。誰よりも大切にする、必ず幸せにすると誓う」

それは待ち望んでいたプロポーズ。

「はい……私も一希を幸せにするように努力します。もう離れないから」

一希の胸に迷わずに飛び込む。

「ああ、もう二度と離さない」

優しく強く抱きしめられる。
美琴は心からの幸せを感じて、最愛の夫の広い背中に手を伸ばした。




「恋も愛もないけれど」 完結  
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