仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
今までも冷たくされて来たけれど、今の一言は一番心に突き刺さった。

（要らないって言われちゃった……）

自分なりに心を尽くして来たつもりだったけれど、一希には受け取って貰えなかったということだ。

食事をしてくれたから嬉しくて、これから少しずつ溝を埋めていけたらと思っていたのに。

（一希、凄く怒ってた）

おそらく、多々誤解があるのだろう。

千夜子は美琴の言葉だけを一希に伝えたのかもかもしれない。自分の不利になる内容は一切話していない可能性がある。
けれども、美琴が千夜子を拒否したのは事実。

でも、妻が愛人に家に来ないでくれと望むのがそんなに悪い事なのだろうか。

（私だって傷ついてるのに……）

一希は少しも思いやってくれない。それどころか傷口に塩を塗るような真似ばかりされている。

さすがに堪えてしまい、全身が疲労感でいっぱいになる。

一希の篭った寝室の扉に目を向ける。

ここは自分の家なのに、身の置き所がないと思う。

寝室に行く勇気はないし、リビングに居てもいつ一希が出てくるかと気を張っている。

（こんな生活、長く続けられるわけがない）

かと言って、改善の方法が分からない。

一希には完全に嫌われてしまっていて、話し合いも難しいのだから。

心が重く苦しくて、美琴は深い溜息を吐いた。
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