仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
三つ子の部屋に行くと、美恵子が着替えをさせていたけれど、三人とも機嫌が悪そうでぐずっており苦戦していた。
美琴が部屋に入ると、気付いた一人が声を上げる。

「あ、お姉ちゃんだ」

弟たちのように駆け寄って来ることはないけれど、三人とも嬉しそうな顔をしていた。

恵美子を手伝って着替えをしながら、様子を見る。
三つ子の頰は赤く、身体も熱い。

「この子たちの方が酷いみたい」

「そうなの。だから心配で」

「早く病院に行きましょう。私、タクシー会社と念の為病院にも連絡して来るね」

弟たちがもっと小さな頃は、頻繁に病院に行っていたから、 慣れたものだった。

手早く連絡を済ませると、荷物をまとめる。
家の中は美琴がいた頃と少しも変わっていないので、直ぐに出来た。

そうしてやって来たタクシー二台に全員で乗り込み、無事受診し、疲れた三つ子がぐずるのを宥めるのに苦労しつつも、なんとか家に帰ることが出来た。





家に帰ると冷蔵庫にあった冷凍うどんで簡単な昼食を作った。

子供達は食事をさせて薬を飲ませてから寝かしつける。
恵美子は薬を飲んだあと、リビングのソファーに座り、美琴の入れたお茶を飲んでいた。

「美琴ちゃん、本当にありがとうね、助かったわ」

「いいって、全員発熱だなんて緊急事態だもの。あと二、三日は通うから、恵美子さんもゆっくりしていて」

「えっ? でも神楽さんは大丈夫なの?」

「うん、今日だって駄目なんて言ってなかったから」

正確には、なんの反応も無かったのだけれど。
一希は美琴のメッセージを読んだはずだけれど、“了解”のひとことすら返信して来なかった。

(きっとどうでもいいんだわ)

美琴がどこに行こうと構わないのだろう。神楽の名に恥じることをしなければ。
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