仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
実家で一通りの家事を済ませてから、神楽の屋敷に帰った。

時刻は夕方の五時四十五分。
一希に言った時間を守れてホッとする。

どうでもいいと思われているとしても、約束は守りたいと思っているから。

キッチンに行き、急いで夕食の支度を始める。

病み上がりの身体に負担がかからないように、身体が温まる刺激の少ないあっさりした味付けの鍋物にした。
直ぐに温めて出せるようにしておく。

それから簡単に寝室とリビングの掃除をしてから時計をみると、丁度八時になるところだった。


きっと、一希は帰って来ないと思う。

美琴の用意した食事も無駄になるんだろう。

そう予想しながらも、先に夕食をとる気になれなかった。

シャワーを浴びて、そのついでにバスルームの掃除をして、一希のためにお湯を溜めておく。

十一時になると、美琴は夕食を取らずに寝室に入り、眠りについた。

今までは、『先に寝ます。夕食は冷蔵庫にあるので温めてください』と書き置きしていた。

けれど、今夜はそれをしなかった。

その行動は、彼にとって余計なことなのだと、気付いたから。
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