仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「ど、どうして?」

パーティは妻同伴と言った側から、なぜ彼女を連れて行こうとするのか。

(まさか、三人で行こうとでも言うの?)

そうだとしたら酷い屈辱だ。
二人への怒りが込み上げてくる。

「彼女を連れて行くなら私が出席する必要はないでしょう? 妻役が二人いたらおかしいもの」

美琴の張り詰めた声に、一希は眉をひそめる。

「何を言っている? 千夜子は観原家の人間として招待されているんだ。俺の同行者になれる訳がないだろう?」

「え?……そうなの?」

「お前がいくら不満を言っても、千夜子が柿ノ木家のパーティに出席するのに口出し出来ない。当日顔を合わしたとしても、間違ってもこの前のような態度はとるな」

「言われなくても、分かってるわ」

一希の言う通り、その状況ならば美琴が介入できることではない。

けれど、疑問だった。

(久我山の家で学んだ交友関係に、観原家の家名は無かった)

だから、千夜子は一希個人の繋がりで、愛人になり秘書になったのかと思っていた。

(でも、違うのかもしれない)

柿ノ木家から正式に招待が来るも言うことは、それなりの家柄の証。

千夜子と一希の関係は、美琴が知っているよりもっと複雑なのかもしれない。

「一応知らせておくが、久我山氏は出席しない」

「そう」

祖父には招待状が届かなかったのだろうか。

テーブルの上の招待状を取り中を確認すると、日付は一週間後と迫っていた。

一希はかなり以前に、この招待状を受け取っていたはずだ。

美琴にだってそれなりに準備が有るのだから、もっと早く知らせて欲しかった。

言っても無駄だろうけれど。

柿ノ木家……なにかが起こりそうな気がする。
嫌な予感に、美琴は気持ちが沈むのを感じていた。
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