仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
キョロキョロと辺りを探るもどこにもいない。

(どこに行ったの?……まさか!)

そう言えば、観原千夜子を見かけていない。
彼女が来て一希に声をかけたのかもしれない。

美琴は衝動的に座っていたソファー席から立ち上がり、人気の少ないテラスの方へ足を進めた。

ふたりが会っているとしたら、人気のないところだと思ったからだ。

テラスから続く中庭は、灯りが抑えてある。

そちらの方に向かおうとした美琴は、聞き覚えのない声に呼び止められた。

「美琴?」

ここで美琴を呼び捨てにする者はいないはずなのに……驚き振り返ると、そこには長身の男性がいた。

「……え?」

アッシュブラウンの柔らかな髪に、くっきりとした二重の目。高い鼻梁にスッキリした口元。

ダークカラーのスーツに、鮮やかなブルーのタイがよく似合っていた。

(この人が私を呼んだの?……でも、誰?)

一見、ハーフのような華やかな印象の彼は、かなり人目を惹く。

挨拶をしていたら忘れることはないはずだけれど。

戸惑う美琴に、彼は明るく言った。

「久しぶり」
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