仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
ならば、観原千夜子のことも知らないのだろうか。

もし、知っていたら二人の学生時代の様子など聞きたいと思ったのだけれど。

「神楽さんは当時から有名だったから、噂はよく聞いたけどな」

「どんな？」

美琴は一希の学生時代のことをほとんど知らない。
だから、興味が湧いたが慧は言葉を濁した。

「昔の話だよ。現奥さんに言うことじゃないし」

「つまり、良くない噂なの？」

「良い悪いも有ったし、噂だから真実かも分からないだろ？ 気になるなら本人に聞けよ。学生のときの話をして？ って言えば、語ってくれるだろ？」

慧は一希と美琴の仲が険悪だなんて、想像もしていないようだった。

「なかなかそんな機会が無くて……ねえ、じゃあ観原千夜子さんって知ってる？」

「ああ知ってるよ。俺は交流はないけど、彼女も有名人だったからな。たしか商社に入ったって聞いたけど。美琴は彼女と知り合いなのか？」

「……彼女は今は、一希の秘書をやってるの」

さすがに、愛人とは言えなかった。

慧が事情を知っていれば、話しただろうけど、十年ぶりに会った友達にいきなり夫の不倫の相談なんて出来ない。

慧もそんな話をされても困ってしまうだろう。
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