仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
たしかに父と義母が再婚したのは、美琴が中学生のとき。

子供心にいろいろ思う所は有ったのだろうけれど、学校の友人に愚痴を言った記憶は無かった。

「いつも言ってた訳じゃ無かったけど。悩んでいたよな?」

「うーん……なぜかお父さんが再婚した当時の記憶が曖昧なんだよね」

「え? そうなのか?」

「うん。あまりその頃の思い出がないの。印象的なのは、弟が生まれたときで、それからの記憶は結構鮮明なんだけど」

「美琴、弟いたのか?」

「いるよ。弟が生まれたのは、私たちが中三の頃だから、慧は知らなかったのかも。弟が生まれてからは家族で上手くやってたよ。今は下に六人も弟妹がいるの」

「……すごいな」

あまり細かい事を気にしない性格だった慧が、驚いている。

彼だけでなく、下に六人も弟妹がいると言うと、みんな驚く。そして、大変ねと言う。

美琴はそれほど苦労を感じていないけれど、周りはそうは見ないようだ。

「じゃあ、美琴は弟妹たちの面倒を見ながら暮らしていて、そんな中、神楽さんと出会ったのか」

「ちょっと違う。結婚を決めたのはお祖父さんと神楽の義父だから。いわゆる政略結婚かな」

「そうなのか?……でも、妙だな?」

慧は首を傾げる。

「妙ってどうして? そう言えば慧は一希と親しいの?」

「いや、俺は神楽さんと直接関わったことはないよ」

「でも同じ大学なんでしょ? お兄さんは同じ年だって言ってたし」

「まあ、そうだけど。同じ学校って言っても人数が多いし、俺たちは高校からの外入生で、神楽さんは内部進学生だから、派閥が違うって言うか、大して交流は無かったな。仲が悪かったわけじゃないけど」

「そうなんだ……」
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