「行きたいのは山々ですが、男の人の家に
行くと、家族に怒られてしまうので…」

私が正直に言うと、

「そうですよね。
俺も栗原さんが軽々しく男の部屋に行く女性
じゃなくて、安心しました。
栗原さんはご実家住まいなんですか?」

「んー、なんて説明すればいいのか…
まあ、似たようなものですけど。」

「似たようなもの?」

「うち、家庭がちょっと複雑で…
実家ではないんですが、家族と住んでます。」

「もし、ご迷惑じゃなければ、サックスを
持ってお邪魔してもいいですか?
栗原さんのピアノもまた聴きたいですし。」

「んー、実は、大変、過保護な父と弟たちが
いまして、男性に対してものすごく失礼な
態度をとるんです。
お気持ちは嬉しいんですが…」

ほんとに申し訳ない。

友人の息子の仁くんすらダメなんだから。

< 77 / 318 >

この作品をシェア

pagetop