「桐生さんは、普通の家庭で
育ったんですか?」

私は聞いた。

「普通というと?」

「ごく当たり前の家庭です。
ご両親がいて、子供が生まれて、成長して
大人になる。」

「まあ、そういう意味では、普通だと
思います。
栗原さんは?
さっき、複雑っておっしゃってましたけど。」

ふぅぅ…

私は、大きく息を吐いた。

「私は養女なんです。
私の実の両親は伊藤課長と宮本専務です。」

「え!?」

「驚きますよね。
私は、伊藤課長の姉夫婦に育てられました。
あ、同情とかは、不要ですよ。
私はとても幸せですから。
名古屋で育ったんですが、大学進学で東京に
来る事になったので、伊藤課長の家に住む事に
なりました。
桐生さんは、ご存知かどうか分かりませんが、
伊藤課長は、小川本部長の奥さんです。
つまり、私は、宮本専務の実の娘で、
小川本部長の義理の娘なんです。」
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