残念な王子とお節介な姫
「一緒についてっちゃダメ?」

結が、おずおずと俺の顔色を伺うように聞く。

「………ダメ。
新しい場所で、新しい役職で、知らない人間と
仕事するんだ。
結がいたら、甘えてしまうし、八つ当たり
だってするかもしれない。
今の俺じゃ、結を守ってやれない。」

結には、心配掛けたくない。

大阪が地獄のように大変な状況にある事は、黙っていよう。


だけど、結は、そのまま泣き続け、俺のTシャツを濡らし続けた。

1時間以上泣く結に、俺は何も言う事が出来ず、ただ寄り添って抱きしめて、頭を撫で続けた。

涙が渇れる程泣いて、結はようやく顔を上げた。

「待ってる。だから、早く私を迎えに来て?」

結がそんなかわいい事を言うから、俺は結をぎゅっと抱きしめて、

「結、愛してる。」

と言った。
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