残念な王子とお節介な姫
「課長?」

奈々が会議室のドアを開けて、心配そうに声を掛ける。

「奈々、読んでいいよ。」

俺は奈々にスマホを渡した。

奈々は差出人を見て、一瞬、驚いた顔をしたが、そのまま黙ってメッセージを読んだ。

「海翔、会いたいんやない?
行ってきてええんよ?」

奈々が言う。

俺は黙って、首を横に振った。

「なんで?
会いたいんちゃうの?」

奈々が不思議そうに尋ねる。

「いつか…
俺が幸せだと絆に言えるようになったら、
会いに行く。
俺の奥さんと一緒に。」

俺は奈々の手を握った。

奈々は、何も言わなかった。
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