残念な王子とお節介な姫
目覚めると、辺りは真っ暗だった。

スマホを見ると、昨日、何度も結から着信が入っている。

なんだろう?
何かあった?

俺は、結に電話を掛けた。

『もしもし!』

結の元気な声が響く。

「結? 相変わらず、元気いいなぁ。
昨日、電話くれた?」

『うん。』

「ごめんな。充電切れで、今、気付いた。」

『今、どこ?』

「家。さっき、ようやく帰って来た。
久しぶりに二徹したよ。」

結に心配掛けたくなくて、最初の1週間、会社に泊まり込んだ事は、内緒にした。

『二徹? 仕事だったの?』

「うん。障害対応が終わらなくてさぁ。
どうしても、月曜には稼働させなきゃ
いけなかったから。
課長は残業付かないのに、酷いよな。」

『よかった…』

「ん、何が?」

『何でもない。』

結の声が、変だ。
鼻をすする音も聞こえる。

「何? 結、泣いてる?」

『泣いてないよ。』

「なんかあった?」

『ううん…』

「結?」

『大丈夫。
ちょっと、寂しかっただけ。』

「会いに行けなくてごめんな。
仕事が落ち着いたら、必ず、会いに行くから。」

『うん。待ってる。』

「じゃ、おやすみ。
結、愛してる。」

『っ! おやすみ…さい。』
< 26 / 262 >

この作品をシェア

pagetop