残念な王子とお節介な姫
しばらくして、俺はようやく、

「結、帰ろ?」

と言った。

「うん。」

結も頷いて、俺たちは、結の部屋に向かった。


電車の中でも、俺はずっと結の手を握っていた。

なんだろう。

どうやっても結から、離れられない。


俺は、部屋に着くなり、いきなり唇を重ねた。

「ん… かい…と…?」

結が、不思議そうにするが、止められない。

貪るように繰り返すキス。

こんな事は初めてだった。



俺たちは、そのままベッドに倒れ込むようにして、この一ヶ月の会えなかった時間を埋めた。

俺は久しぶりに結に触れて、抑えが効かなかった。

キャリーバッグに避妊具を入れては来たが、それを出す余裕もなく、結を抱いてしまった。

その最初の1回が、あんなに俺たちを苦しめるなんて、この時は思いもしなかった。



俺は、空の星が消えてなくなるまで、結を求めて、そのまま、日が沈むまで眠った。
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