残念な王子とお節介な姫
『まあ、それなりには。』

「俺が構ってやれない間、結を動物園や
水族館に連れてってくれたのも君でしょ?」

言外に俺の代わりだったと伝える。

自分がいかに醜い心を持っていたのか気付かされる。

『いえ、人違いじゃ、ありませんか?』

「そうか。
同期って言ってたから、てっきり君だと
思ってた。」

『女の同期じゃありませんか?』

「ああ、そうかもしれないね。
まあ、2、3年して、俺が本社に戻るのに
合わせて復職すると思うから、また、仲良く
してやってよ。」

女同士で、動物園や水族館に行くか?
2ヶ月で3回だぞ?

結が復職する時には、俺も一緒だと伝えた。
だから、もうお前にはチャンスはないのだと。
結は俺のものだと。

『………はい。
失礼します。』

小川は、淡々と答えて電話を切った。


結は俺のものだと伝わっただろうか。

諦めてくれただろうか。
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