愛のない部屋
第1章
始まり
電気が点いているから、帰っているのだろう。
それを分かった上で、
人の気配のするリビングに"ただいま"も言わず、無言で入る。
一瞬、目が合った。
相手も同じように"おかえり"とは言ってくれずに、テレビを消した。
そして素早く、リビングから居なくなる。
ひとり残された私は何事もなかったようにソファーに腰掛けた。
アイツは私を"空気"だと認識しているに違いない。
言葉を交わさなければ、争いも起きない。
口論になれば、面倒くさいし。
そんな会話のない私たちは、
―――同棲しています。
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