愛のない部屋
「好きじゃないの?」
「好きではありません」
「それじゃぁ、なんで同棲なんてしているんだ?だいたい話は聞いているけれど、滝沢さん?彼に紹介されたんだよね」
峰岸はタキの話を篠崎にしているようだ。
タキ以外にも信用している友人がいて、羨ましい。
アイツはひとりなんかじゃない。
「好きでない男と、って常識的に考えてオカシイことは分かってます。でも私は常識はずれの人間ですから」
誰が見ても変わっているだろうし、常識のない人間だとも自覚している。
普通、いくらプライベートでも上司にこんな偉そうな態度をとらないだろうし。
「では聞くけど。マリコが同棲を解消して欲しいと言ったら、君はそれに従える?」
「もちろんです」
2人を引き裂こうとは思っていないし、
第一、ただの居候に反論を唱える資格はないであろう。
「分かった。色々と聞いてごめん」
「いえ」
「それじゃぁまた月曜日に」
いつものスマイルを浮かべて篠崎はリビングを後にした。
玄関まで見送る気になれず、またソファーへと腰掛け、目を閉じた。
疲れた…。