愛のない部屋

タキから後10分で着く旨の電話があった時には既に昼食の用意は完璧だった。

テーブルに並んだ3人分の料理を見て我ながら美味しくできたと感心していると、
再び電話が鳴った。



「タキ、どうしたの?」


『……いや、峰岸だけど』


タキより低い声が響いた。



「あ、どうしたの?」



タキ以外からの電話なんて、久しぶりだな。



『昼に間に合わなさそうなんだ』



「少しくらいなら待つよ?」



『いや、夕方になりそう』



峰岸の声と共に、外の騒がしい雑音が届いた。



「せっかく作ったのに」


『悪りぃ。仕事でトラブって』


「……」



マリコさんと会うことが、仕事?



『ホントにごめん』


「嘘つき!」



電話越しに怒鳴りつけ、一方的に切った。




オカシイ、よ。



マリコさんと会っていると言いたくないなら敢えて言う必要はないし、私だって詮索なんてしないのに。


何故、仕事であると嘘をつくのだろう。




アナタまで平然と私に嘘をつくのか。

その嘘が私をどれくらい傷付けるのかも知らずに
アンタはどんな顔をして言ったのだろうね。

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