愛のない部屋
タキが考案した罰ゲーム。
途中で逃げ出した理由が、
峰岸の過去を知りたくなかったからだと、
冷静な頭では理解できた。
彼が今までどんな恋愛をして来たなんて、知らない方が良い。
過去に戻って彼女たちから峰岸を奪うこともできないし。将来、ずっと一緒にいられるかということすら疑問なのだから。
「私はタキや舞さんのように、永遠の恋を信じることができない。好きだと言ってくれたことは凄く嬉しいけれど……」
「良いよ」
背中に回されていた手が、今度は髪に触れた。
「無理して恋をしようなんて思うなよ。ただ、覚悟しとけ」
髪にキスをおとし、ニヤリと笑う。
「絶対、俺なしでは生きられなくしてやるから」
「ばーか」
自意識過剰。
「私の心はそっとやちょっとで、溶かされないよ」
「上等だ」
傷付いた2人が向かう先が、再び傷跡をえぐりだす道なのだと
警告音を無視した私は、まだ知らない。