愛のない部屋
「キスも止めてよ。互いの過去に口を挟むこともしないって約束しましょう」
「…厳しいな」
境界線を引くことでけじめをつけたかった。
本物の恋人同士にはなれないのだから、
越えてはいけないラインがある。
「恋人ゴッコ、みたいだな。俺は本気で好きなんだけど」
"恋人ゴッコ"
アノ人とやった遊びだ。
もちろん私は遊びだなんて知らなくて、好きでいっぱいだった。
峰岸が好きだと言ってくれても、揺るがない心は恋を否定し続けている。
「本気の恋なんて信じてない。もう二度と、信じない」
「分かったよ。それじゃぁ…偽恋人から始めよう」
同居人からは進歩したしな?――なんて笑う峰岸の優しい顔に魅了される。
いつも仏頂面の人がこうして笑うと、何倍も笑顔が輝いて見えるんだよね。
反則だ、。
「止めたくなったら、いつでも止めて良いよ?」
「誰が止めるかっ」
少し怒ったような表情も、全てが愛おしい。
はっきりと自覚した。
私は峰岸が、
す、きだっ。
好きだからこそ真剣な交際ができないという私の気持ち、
アナタには分かってもらえるかな。