愛のない部屋
すっかり冷めてしまった2人分のパスタを口にする。
舞さんは数分前、タキに会うためにお店を飛び出して行った。
私がそう勧めたのだから、置き去りにされても嫌な気持ちにはならなかったけれど。
私も峰岸に会いたいなんて、不覚にも思ってしまったじゃないか。
生意気で乱暴だった口調が最近は甘いものへと変化していて、幾度となく惑わされる。
本当は峰岸を受け入れたいし、私も受け入れられたい。
それでもそう出来ないのは、他でもなく忌々しい過去の思い出のせい。
あの頃のように真剣に恋愛を追い掛けてなにを得られるのか。
未来というかたちの無いものを夢見て、また傷付くのではないか。
不安ばかりが募る。
結局、舞さんに偉そうなことを言う資格なんてない。
向き合おうとせず自分が一番、恋愛から逃げている。
恋に臆病な自分への苛立ちを隠せず、一気ににパスタを頬張った。
むせそうになりながらも、どうにか耐えると優しい味が口内に広がる。
峰岸にも作ってあげたいな。