愛のない部屋
テーブルを挟んで峰岸と向き合うかたちで腰を下ろす。
「マリコに傍に居てと泣きつかれて。俺はそれを受け入れることにしたんだ」
「それ、私に関係のある話?」
マリコさんの話を聞いてしまった後で、峰岸のことが"好き"だなんて言いずらくなる。
「関係ある」
きっぱりと言い切られても聞きたくないものは、聞きたくない。
「マリコさんのことは、もういいの」
私が敵わない相手だということは、承知の上。
それでも峰岸が好きだ。想うだけなら許される?
「よくないよ。あのマリコと会った夜のことから話さなければ、伝わらないんだ」
「峰岸は私になにを伝えたいの?」
夜中に電話をしてくるような非常識な私に、お説教をするために此処に来たの?
それ共、マリコさんとの順調な交際を知らせに来た?
「俺は…………さっき言った通りだ」
「お祭りのこと?」
「違う」
「じゃぁ…」
「おまえを篠崎から奪って、俺のモノにしたい」
車中での言葉。
何故、峰岸はそこまで私に執着するのだろう。
「伝えたいことなんてひとつしかない。おまえが好きだ」
真っ直ぐな瞳に、揺らぎは見えない。