愛のない部屋
峰岸も私と同じ想いだと信じてもいいのだろうか。
「今夜は篠崎を呼び出して、おまえをなんとしても奪うと宣言してきたんだ」
「……、」
篠崎はどんな反応をしたのだろう。
「アイツは何も言わずに、黙って酒を飲み続けてた。何杯も何杯も…顔色すら変えず、酔った気配もなかったな」
さっき車から降りていった篠崎はいつもと同じに見えた。
「最後まで篠崎はなにも返事をくれなかったよ……」
峰岸はきっと罪悪感と、篠崎への後ろめたさを感じているのだろう。
「私たち付き合ってないの」
「え……」
呆気にとられたような峰岸の反応。
そしてすぐに私の隣りにきて、肩を激しく揺すられた。
「ホントに付き合ってないんだな?」
すがるような目、肩を掴む強い力。
どうして馬鹿な嘘を付いたのだろう。
嘘がもたらしてくれたモノなんて、何ひとつないのに。
「ごめんなさい……篠崎さんは私の嘘に付き合ってくれたの」
私の居場所を用意してくれた。
「篠崎さんがいなかったら、あの夜も自暴自棄になっていたと思う」