愛のない部屋

峰岸の瞳が閉じられる。


「俺のせいでマリコは旦那と別れることになった」


「結婚してたの?」


マリコさんが既婚者だなんて予想すらしてなかった。


「ひとり息子の親権争いになっているらしい。マリコは専業主婦で収入もなく、旦那の方が有利みたいだ」

黙って話を聞く。複雑な状況のようだ。


「俺はなんとかしてマリコの力になりたくて。協力すると約束した」


面倒事にまで首を突っ込む優しい男。
アンタのことだからその約束を果たすまで妥協はしないのだろうね。


「マリコはまた俺と、、付き合いたいと言ってきた。もちろん断ろうと思った。俺にはおまえがいるから……でも苦しんでるアイツを見て、同情した」


旦那さんと別れ、そして息子さんまで奪われそうになった時、峰岸の顔が浮かんだのだろう。

かつて愛した男に会いたくなることは自然な流れ。



――でも、正直ガッカリ。


「結局、峰岸が私よりも。マリコさんを選んだことに違いはない」


同情だとしても、マリコさんに歩み寄ったのは峰岸の方。

選んだのは峰岸だ。

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