愛のない部屋

「……言い訳がましいかもしれないけど」


「うん」


「マリコに死ぬ、って言われたんだ」


「…………」


「ひとりにしたら死ぬから、だから傍に居てと言われた」


死ぬなんて冗談に決まってる。
アンタを手に入れるためなら何だって言うよ。


そんな言葉が出なかったのは、私も同じだったから。


タキに何度も何度も"死にたい"と口にした。
男に捨てられ、両親もいない。

もう死ぬ以外には選択肢が無いと、本気で思っていたあの頃と同じ。


マリコさんの気持ちが分かるなんて言ったら、ライバルの肩をもつことになる。

それでも、



「マリコさんは本気で死ぬつもりかもしれない」


言わずにはいれなかった。



峰岸が愛した女性が軽々しく"死"という言葉を口に出すはずない。



「おまえ……」


「少しマリコさんの気持ちが分かるから」


「……そうか。力になりたいとは思うけれど、マリコを愛したいとは思わない」


「それは結局、マリコさんを傷つけるだけだよ。だってマリコさんは峰岸の全てが欲しいんだもの。アンタもそれを分かってて、私から離れたんでしょ?」

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