愛のない部屋

頼まれた書類を上の階まで運ぶ。

書類といっても分厚い資料が束になっていて相当、重い。

普段は篠崎がやっていることだが別の作業があって今日は私が担当することになったが、肉体労働と呼べるほどの重さだ。

あの人は部下に頼まずに、今まで文句も言わずにやっていたのか。

篠崎の良さがどんどん見えてくる。


「あっ」



会議室が見えたところで油断したせいで、バランスを崩してしまった。

やっちゃった……

床にばらまかれた書類の束を見下ろし、大袈裟にため息をつく。



「……馬鹿だな」


「峰岸っ」



かかんで私より先に散らばった書類をまとめ始める。



「あ、ひとりで出来るから……」


一昨日だって休日出勤をした峰岸。私の失敗に付き合う時間はないはずだ。



「こんな状況で素通りなんて、人間性を疑うよ。ほら早くおまえも拾え」


「ありがとう…」


私も床に膝をつき、書類を拾う。

せめて仕事くらいはしっかりやりたいのに。

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