愛のない部屋
今はなにも返せないから、御礼を言うことしか出来ない。
「いつか篠崎さんの恋のお手伝いをさせて下さい」
生意気な発言。
おまえには100年早い、そう相手にされないと思ったのに。
「その時は宜しく頼むよ」
なんて言われてしまった。
それから
「ああー、ダルいダルい」
上司という立場での、ダルい発言。
「今日はやる気出ねぇわ。俺の分までおまえが頑張って」
「なんですか、それ」
「愛の力でなんとかして」
「無理です」
「冷たいなぁ~可愛いから許すけどね」
そう言って私の頭を軽く叩くと、篠崎はさっさとデスクに向かう。
なにが可愛いだ、そんなこと簡単に言わないで欲しい。こっちは慣れてないんだから。
デスクに置かれた山積みの書類を手に取るその表情は、既に仕事モード。篠崎の切り替えの早さに感心してる場合じゃない。
私も頑張らなくちゃ。
仕事とプライベートは別物だから。
マリコさんと顔を合わせたことは、なぜか言えなかった。