愛のない部屋

「ビール買ってくるわ」

「勝手にして」


峰岸に対する言葉に優しさのカケラなど含ませない。


「うぜぇ女」

吐き捨てるように、罵られる。


「うざくて結構」

すぐに言い返してやる。




もうこちらを見ずに舌打ちをしてリビングから出て行く峰岸の後姿に、心の中でそっと謝った。



刺々しい態度をとる私が悪いのだと思うけれど。

突き放すことで距離を保てる内は、大丈夫。




峰岸に、
私の弱さや脆さを暴かれないために、
今日も嫌な女を演じる。










「いらっしゃい」

しばらくしてやって来た訪問者をリビングに招き入れる。


「お邪魔します」


笑顔で私の頭を撫でてくれる、
滝沢ことタキに、私も笑い掛けた。



「おー、峰岸は?」


「コンビニじゃない?ビール買ってくると思う…」


「なに、お前ら。まだ上手くいってないの?」


歯切れの悪い私の言い方にタキは察したようだ。



「上手くいきっこないよ」

「なんで?」

「アイツは私が嫌いだから」


タキの綺麗な瞳を見て、きっぱりと告げた。


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