愛のない部屋
だからもうスーパーのことはどうでも良くて、今はただ素っ気ない峰岸の反応が気になって仕方がない。
私の好きだった人が、会社にまで訪ねて来たことは――峰岸にとっても少し衝撃的だったかな。
「ビール、忘れずに買おう」
「うん」
「俺、つまみは刺身がいい」
「うん」
普段通りの穏やかな会話に、今日は安らぎを感じるどころか苛立ちを感じた。
峰岸のバカ――!
そう悪態をつきたくても、峰岸はなにもしていない。
ただ反応の薄さに、私が勝手に腹を立てているだけで彼はのんきに、今晩の夕食について考えているだけなのだろう。
スーパーで買い物をしている時も、必要最低限の会話しかしなかった。
峰岸が話さないのではなくて、私の口数が少ないことが原因なのかもしれないけれど。
明るい話題をわざわざ提供できるほど、穏やかな心ではなかった。
先生のこと、もう少し気にして欲しかったなんてワガママな思いなのだろうか。