愛のない部屋
立ち上がって机を叩く。
「ちゃんと話を聞いて!」
「もういいと言っているだろうが。おまえが先生とやらに会おうが、どんな話をしようが、口出ししないよ」
「…峰岸、」
「それがおまえの望みだろう?」
自嘲気味に笑い、私の横を通り過ぎる。
「仕事、篠崎に押し付けて来たんだ。まだ残業してると思うから、ちょっと行ってくるわ」
「待ってよ……」
破片の後片付けを素早く済ませた峰岸はリビングを出て行った。
「峰岸……」
聞こえているはずなのに振り返ってはくれない。
遠ざかる足音。
私たちの距離を表しているかのような不愉快な音が、聞こえなくなるまでその場に立ち尽くした。
「みね、ぎしの、ばかっ……」
謝らなければいけないのは、私の方なの?
私だけが悪いの?
リビングはテレビからのアナウンサーの声しか聞こえず、食卓にはまだ温かい作ったばかりの料理が並んでいた。
私は、
愛のない部屋に
ひとり、残された――。