愛のない部屋
噂話なんて興味ないのに。
篠崎が話題にした噂の中身をすぐに知ることになった。
お昼休み、
一緒にランチをする相手もおらず、ひとり社員食堂に向かった。
日替わり定食を注文して適当に座る。
まだ午前中の業務のやり残しがあるから、さっさと食べて仕事に戻ろう。
そんなことを考えていた矢先、
「すみません、」
そう声を掛けられた。
「はい?」
返事をしつつ、味噌汁をすする。
「隣り、いいですか?」
「どうぞ」
さりげなく周りを見渡せば、空席はまだ沢山あるのに。わざわざ私の隣りに座る意図が分からないからか嫌な予感がした。
ちらりと隣りに座った女性社員を見る。
サプリメントらしきものを服用していた。
お昼、それだけ?
…あ、痩せてるな。
毛先をカールしてメイクばっちり。
化粧は濃い方。
真っ赤なルージュも映えていた。
「今朝、見たんです」
いきなり言葉を投げつけられ、首を傾げる。
なにか奇妙な光景でも見たのだろうか。
「峰岸さんとお付き合いしてるんですか?」
すぐに彼女の発言を理解できなかった。
「この間も一緒に居たのを見ました。私、あなたのような人と峰岸さんが付き合っているなんて、信じられない」
直球な言葉と探るような視線を向けられて、味噌汁の味がしなくなった。